うなだれて歩く
適切な治療方法が見つからず、体を持て余していた私は、人前ではますますはしゃぎ、元気に振る舞うようになりました。それは、他人には苦しみがわからいことを体験によって学んだからでした。
そして、一人になると人格が変わったように、以前にも増して落ち込んでいました。俯いて歩くのが癖になりました。それは、首と背中の突っ張りによって、背筋を伸ばして歩くのが苦痛だったからでした。その姿勢が、コリをよりひどくさせることは知っていましたが、気分が滅入っていたのと、肉体的活気のなさで、自然とうなだれた状態になっていたのです。
友だちからは、「何かいいもの落ちてんのか」「お前の歩く姿はオジンやな」と、からかわれるようになりました。
すりこ木でゴリゴリしながら勉強する
中学2年生になり、クラス替えがありました。団塊の世代であった私の通っていた中学校は、1クラス55人くらいで、13クラスもありました。
小学校は小さかったので、同じクラスになることはあまりなかったのですが、たまたま小学生時代に同じクラスであった、成績が抜群によく、密かにあこがれていた女の子と同じクラスになりました。
ある時、その女の子が「笹井君、A君にはずいぶん離されてしまったね」と、つぶやきました。
A君とは、小学校時代に勉強のライバルであった友人です。マンモス中学校でも、A君の成績はトップでした。
あこがれの女の子に言われるまでもなく、そのことは自覚していました。しかし、脳は覆いをかぶせたように知識の流入を拒絶していました。
私は自宅で勉強するときは、マーカーにキャップを被せたままで頭や首、肩を突き刺しながらしていました。やがてマーカーのキャップよりも、すりこ木でゴリゴリやる方が効果的であることを発見しました。
自己否定のループ
肩こりや首こりで悩んだことのある方は、お分かりいただけると思いますが、コリがひどくなると肉体的につらいのはもちろんですが、なにより精神が病んできます。考え方がネガティブになり、自己否定を繰り返すようになります。前向きに考えようとしても、否定のループから抜け出せなくなります。生きる活力を失い、自殺思考が友になります。
やがて私は、勉強することをほっぽり出してしまいました。